亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
その傍若無人な言動に閉口してしまっている兵士達を、ケインツェルは、しばらくの間扉越しで会話をします…などと言って強引に追いやってしまった。
………ケインツェル以外誰もいない、扉の前の廊下。
しんと静まり返ったその場で、ケインツェルは巨大な扉に向き直った。
重々しい扉の表面を、細い指の腹でゆっくりと撫でる。
「………陛下、ばっちりと起きていらっしゃるのは分かっているのですよ?…このケインツェルの目は、目付きは相当悪いですが、節の穴ではありません。……誤魔化せるとでもお思いですかねぇ?フフッ…ハハハハ!」
ゴツン、と扉に額を付け、気持ちの悪い笑みを浮かべるケインツェル。
………傍から見れば、その姿はストーカーか何かだ。
特に意味も無く、ゴリゴリと扉に額を擦り付けながら、小さな溜め息を漏らし、ケインツェルはにんまりと口元を歪めた。
「………………その様に塞ぎ込んでおられると……亡くなられたテナ様が、悲しまれますよ……陛下…」
幾分音量の落ちたケインツェルの囁き声は、正面の扉を舐める様に這い、室内に流れ込む。
白い歯が覗く、形の良い唇は、その動きを止めない。
「………貴方様の愛する亡きテナ様は…今でも冥土の何処かから貴方様をご覧になっているでしょうよ。………縮こまる貴方様の姿を見て……どう思われているでしょうねぇ?後悔しているのではないですか?…貴方様の代わりに死んだ事を…」
「―――黙らんか…下衆めが」
止まる事を知らないケインツェルの言葉の群れを、低いしわがれた声が、前を遮った。