亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
会いたいと願う彼女は、いつも夢の中で………冷たくなっていた。
夢の中で自分が両腕に抱えた最愛の彼女は、真っ白で、血塗れで、美しい模様の浮かぶ瞳には輝きなど無く。
ただ、冷たかった。
目を瞑れば決まって見る、色褪せない記憶。
夢でしか会えぬ彼女に会いに行っても、会えるのは……彼女の形をした、屍。
いくら呼んでも、いくら揺すっても、ただの冷たい人形の様な虚しい反応しか返ってこない。
わななく唇を噛み締め、どうしようも無く込み上げてくる涙を拭おうともせずに、悲しみに暮れる。
悲しむ老王の前で、“あれ”は………笑っている。
真っ赤な炎を背に佇み、こちらを見下ろしている。
笑っている。
化け物が、笑っている。
憎らしげに見上げた老王に、その化け物は決まって…言うのだ。
あの時と同じ、今でも鮮明に残る………化け物の声が…。
………聞こえてくる。
………我が耳を、今でも……何十年経った今でも…………支配する。
―――『貴方のせいだ』
老人の押し殺した啜り泣きが、室内から聞こえてくる。
想い人を想って泣いているのだろう。
………しわだらけのご老人となった今でも、悲しみに暮れる心は若々しいままで…歳を取っていないようだ。
大人気ない、と言ってしまえばそれでお終いだが………少々異常だ。過去への執着心が強過ぎる故か。
「………泣き虫陛下、聞いておられますか?…数日後に控えております賊討伐の件ですが……せめてその時位はお顔を見せて下さいます様お願い致しますよ―。指揮を取るのは陛下なのですから」