亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
何でも知らなくては気が済まない性分のケインツェルにとっては、その『化け物』とやらの情報は知らずにはいられない、とても素敵なネタなのだが……残念な事に、知る術が無い。
理由は簡単。
当時の戦に出兵された兵士のほとんどが………皆、原因不明の病によって既に亡くなっているからだ。
…現在も生きている者で唯一、『化け物』の姿を目にしているのは、実は老王ただ一人なのである。
………ケインツェルが知りたくて堪らないその当時の記憶自体がトラウマになっているのだから、老王本人から聞き出すのは絶対に無理だろう。
なので、その話に関しては、ケインツェルはとっくの昔に諦めている。
突き当たりの角を曲がり、老王の部屋が見えなくなった辺りで、ケインツェルは不意に歩みを止めた。
顎に手を添え、やや薄暗い天井を見上げながら………溜め息を吐いた。
珍しい事だが…その表情には、いつもの深い笑みは無い。
(………ふーむ…陛下の最終手段の餌として使っていた“テナ”様は……今ではただの、臆病陛下に切り替わるスイッチでしかありませんかねぇ………と、なると………)
「―――……陛下では、もう……つまらないです…ねぇ………」
…うるさい銀縁眼鏡の側近が消え去った後、重い足取りで兵士等は戻って来た。
老王の部屋の扉の両端という定位置に立ち、再び警備体勢に入る。
「………やっと解放されたな…」
「全くだ。………どうも俺は……ケインツェル様が苦手だな…」
「平気な奴などいるのか?………何というか………あの方が側にいると…疲れる」