亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――。
―――…仄暗く室内を照らす暖炉の火が、何かに怯える様に縮こまるのが……一瞬だけ見えた。
炭化してひび割れた漆黒の薪が、不規則な間を置いて亀裂を走らせ、何度も何度もはぜりだす。
部屋の隅で小さな鳴き声を上げる暖炉をぼんやりと見詰めた後、ゆっくりと視線を手元に戻した。
暖かい厚手の膝掛けの上には、まだ網かけの小さな毛糸帽。………もしくは、腹巻きか何か。
……正直な話、歪過ぎて……それが何なのかは分からない。
しかし、作り手である当の本人は、明らかにそれが失敗作であることにも関わらず、再び編み始めようとする。
謎の作品が出来上がる事を承知でせっせと取組むのは、並外れたポジティブ精神故か。
それとも、気付いていないだけか。
分厚い凍て付いた窓の硝子に大小様々な純白の雪がぶち当たり、張り付き、風に掬われて再び夜空に舞い上がっていく。
空から降りてきた雪の子供達は忙しなく舞い続けるばかりで、地に着く事も、ままならぬ。
こんなに寒い中、大変だこと。
………何処か間の抜けた事を考えながら、丸い毛糸を少しずつ小さくしていく。
………日も、暮れてきた。
今夜はとてもとても、寒くなりそうだ。
予備の薪はあっただろうか。火を絶やさない様にしなければ。
いつも以上に激しい吹雪を横目に、小さく歌を口ずさむ。
「―――…お菓子は―…パイでよろしいですか―…ミルクを注いで―…差し上げましょう―………。………………………………大きな嵐だことね…」