亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
――…狩人の勘、というものは、獣と同レベルの鋭さを秘めているらしく、良い事悪い事に関わらず、事が起きる前には何かしら感じるものだ。
その勘とやらがどんなものか。それは人それぞれだが……大抵は、悪寒だとか、武者震いに似た奇妙な震えだとか………身体的にも精神的にも、とにかくピンとくるものがある。
養わなくとも狩人として生まれてきた時点で持ち合わせているこの厄介な勘とは、死ぬまで付き合っていかなければならない。
常日頃、悪い予感を感じては、当たりませんように……と願うのだが……如何せん。…その辺の占い師よりも当たってしまうから、どうしようも無い。
…特に、自分の勘は一般人よりもやけに冴えているらしく、必ず、当たる。
……この過酷な雪国で生きていく上で、それは命綱に等しいものなのだが………時々、要らないなぁ…なんて思ってしまう、狩人のザイ。
そして今回もやはり…………………予感は、的中していた。
(―――……すぐ近くに、『嵐』があるな……)
…昼間よりも、明らかに威力を増している吹雪。
吹き付ける風の勢いや、氷点下を順調に下回っていく気温。昼間のそれとは、その差は歴然だった。
このデイファレトで最も危険な自然現象として恐れられる『嵐』には、とある特徴がある。
『嵐』は雪空に浮かぶ風の塊。爆発が起こる前兆として、青く光り始めるのだ。
同時に、凄まじい冷気が吹雪に混じり始める。
爆発寸前の『嵐』が漏れ出す冷気は青白く、肉眼でも確認出来る。
(………嵐がある、証拠だな)
そう思うザイの頬を掠める風に、青白い筋の様なものが時折混じっていた。