亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
だいぶ近くにある筈の嵐。しかし、この猛吹雪の中ではその姿を確認出来ない。いつ爆発するのか分からない爆弾のすぐ傍を、歩いているのかもしれないというのに。
……ここで幸いだったのは、追手が来ないということだった。
襲撃をしてきた先程のバリアン兵士達や、正体不明の男女二人。少なくともどちらか一方はしつこく追いかけて来るのではないか、と警戒していたのだが、その心配は無用だった様だ。辺りの様子を窺っても、自分達以外の気配は今のところ皆無だ。
(……早く…安全な場所を探さねば…)
これ以上、事態が悪化しない内に…。
…そう考えながら、ザイはフードの隙間から背後に目をやった。自分の後ろをついてくる者達は、今のところ静かにしているものの…気が気で無い様だった。
特に、サリッサ。
ついさっきまで、息はしているが意識の無い息子を見る度に涙し、己を責め続けていた。今はただただ無言で、最後尾を歩いていた。
…その目が覚めないユノを背負ったまま無言で歩き続けるレトも……心なしか自分を責めている様で、小さな唇を噛み締めている。
ザイはゆっくりと歩く速度を緩め、そっと…王子を背負うレトの隣に並んだ。
俯いているレトを一瞥し、前を見詰めたまま、ザイは微かに口を開く。
「…………お前のせいではない」
「………」
聞こえている筈なのだが…レトは、応えない。見下ろしても、視界に映るのはフードを被った小さな頭だけ。顔を上げようともしない。