亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

何処かの街に行って何かしらの処置を施さなければならないだろう。

王子を治せるものなら治してあげたいが……残念な事に、狩人の世界では、医療というものが無い。

応急処置という名の荒療治ならばあるものの、それは主に戦闘における外傷の治療や解毒ばかりで……王子の様な場合は役に立たない。


身分の低い狩人が街の民に助けを求めるなど、滑稽且つ前代未聞な事だが………そこは致し方無い。
しかしこの辺りは『禁断の地』の近辺だ。………どの街にもバリアン兵が潜んでいると考えていい。


街は出来るだけ避けて行きたかったが、王子の容態をどうにかする事が最優先だ。背に腹は代えられない。


難しい顔に、更にしわを刻んでいくザイの傍らで、黙々と歩いていたレトが柔らかな雪に足を取られ、一瞬バランスを崩した。

素早く体勢を立て直し、反動でずり落ちそうになっていた小さな冷たい身体を背負い直した。
………まだ幼いレトに、人一人背負って歩き続けるのは少々酷だろう。

「………レト、私が背負う。……王子を…」

…こちらに、と…ザイは手を差し延べた。
父の大きな手を見上げるや否や、レトは…。





「………いい…」

………小さくそう呟きながら、首を左右に振って即座に断った。

「………無理をするな」

「………無理…してない…」

「………レト…」

フードの内からくぐもって聞こえてくる息子の声は、やはり何処か沈んでいて、拗ねている様にも感じられた。

自責の念に駆られるあまり、少々ムキになっている様だ。

……しかし、昼間の襲撃に費やした体力を考えると、やはり無理はいけない。
< 657 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop