亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………レト、王子をこちらに渡しなさい…」
「………」
「……レト…」
…猛吹雪の中で、静かな押し問答が繰り返される。
黙ってばかりで全く言う事を聞かないレトに、ザイは内心酷く驚いていた。
……レトが父の言う事を聞かないなど、未だかつて無かった。いつでも、どんな時でも、息子は常に従順だった。
……これが、子育ての過程において必ず出くわす難関…世に言う、反抗期というやつだろうか。
…聞いていた通り、何とも扱い辛い。
しかし、それとこれとは別だ。反抗期だろうが何だろうが、今はそれどころではない。
「……レト…何故何も言わない……言う事を聞きなさい」
「………」
「……何を思い詰めている…。………お前は、悪くない。自分を責めるな…。………悪くないのだ…」
「―――…ぅ……」
小さな口は微かな声で言葉を紡ぐが、それは父の耳に届く事なくかき消されていく。
「………全ての、あらゆる要因が重なったのだ…全ては因果なのだ。お前一人のせいではない…」
「―――…が…ぅ…」
「…誰のせいでも…」
「―――…違うっ!!」
ゴウッ…と、一際強い突風が、二人の間を通り抜けて行った。
過ぎ去った後に残るのは………目を大きく見開いて佇むザイと………そんな父を見上げるレト。
立ち止まる二人の後ろで、唖然とするサリッサ。
……足元で跳ねていたアルバスまでもが、レトの叫びに驚き、歩みを止めてしまった。
………いつも眠そうな半開きの目はカッと見開き、紺色の円らな瞳は小刻みに揺らいでいた。
唇が、微かに震えている。
突然のレトの叫びに、一行は固まった。