亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


瞬時にレトの右手はマントの内から剣を引き抜き、積雪を深々と突き刺した。

何処まで転がって来たのか分からないが、握り締めた剣に掴まってようやく静止する事が出来た時……そこが崖の急斜面だということが分かった。

…剣一本が支えの、宙ぶらり状態。
少し目線を下ろせば、風と闇が渦巻く谷底が視界に入ってきた。
落ちたら…一溜まりも無い。
この足元に広がる谷は、ここデイファレトで一番巨大且つ深い谷なのだから。

……落ちれば最後、二度と地上を歩く事は出来ない。………その前に全身強打で即死であるだろうが。


(………嵐…だったんだ…)

時既に遅しだが…この時点でようやく嵐があった事に気が付いた。しかも、かなり巨大であった様だ。

見渡す限りの景色が、本の数秒前の姿から激変していた。

谷沿いに広がっていた森の木々は、根っこからことごとく薙ぎ倒され、雪で出来た丘は、その頂上が風で削られ、真っ平らになっていた。
レトが剣で突き刺している目の前の崖には……大きな亀裂が生じている。

………早く地上に登った方が良さそうだ。



爆風、と言う程でもないが、宙吊り状態のレトの身体を振り子の様に揺らすには充分な青い強風が吹き荒れている。

………もたもたしている場合ではない。
嵐の爆発による爆風は、一度だけとは限らないのだ。

……これほど巨大ならば、第二波は充分予想出来る。





(―――……ユノ……ユノは……!?)

抱えていた彼の冷たい重みが、今はその背中には無い。

爆風が襲って来た瞬間、レトは咄嗟に風からユノを庇ったのだ。
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