亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


だが、風の力は予想以上に強大だった。
崖とは反対側にユノを突き放したのだが……嵐の爆発が相手では、それも無意味な行動だったかもしれない。


………こんなに大きな嵐の存在に気が付かなかったなんて…。

(………父さん…)



父は大丈夫だろうか。傍らにいたサリッサを庇うのが見えたのが最後、今は父の姿も無ければ声も聞こえない。…まだ錯乱している頭では、気配を察知する事も出来ない。


レトは雪で埋もれた地上を見上げ、空いている手で剣をもう一本腰の鞘から引き抜いた。
両手に握った剣を交互に急斜面に突き刺しながら、少しずつ上へ上へと登って行く。


………並の風よりも強力な突風が、行く手を阻むかの様に体当たりを繰り返してくる。
大きめの雪の塊がボロボロと崩れ、肩や顔に降りかかってきた。

レトはただ無言で地上を目指す。更に上へ…と剣を頭上に突き刺した時だった。



















「―――チチチッ…チチッ」










……聞き慣れた雛鳥の声が聞こえてきたのは、後方からだった。


半ば反射的にその鳴き声を辿り、被っていたフードを捲り上げて真っ暗な谷底が広がる下へ視線を移すと……そこには……。










「―――…ユノ…!」


吹雪きと青い風に阻まれた視界の隅に、捜していたユノの姿があった。

レトがいる急斜面から更に下。ほとんど角度は垂直に近い崖の壁に、地中深くまで張り詰めていた根っこに引っ掛かる様に、彼はそこにいた。

今にも崩れ落ちそうな根。小さなアルバスが彼のすぐ側で鳴きながら、ユノの服を嘴でグイグイと引っ張っていた。
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