亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
レトはすぐさま進路を変え、ユノのいる下方へと移動する。
全体重を支えている両腕は、その自身の重さと極寒の風により、小刻みに震えていたが……そんな事、どうでもいい。
感覚が無くなろうが痙攣しようが凍傷になろうが、構わない。
「………ユノ…待ってて……ごめん…ごめんね…」
………脆い壁を何度も何度も剣で突き刺しながら、レトはなんとかユノの側にまで辿り着いた。
相変わらず意識の無いユノは、複雑に絡み合った大きな木の根に辛うじで引っ掛かっていた。砂埃や雪に塗れ、マントも所々破れていたものの、怪我は無い様だった。
アルバスはアルバスでこんな時でも相変わらずで、やって来たレトを見るや否や根っこの上で小さく跳ね出す。
……木の根の強度を確かめ、レトはその上にそっと跳び乗った。
………ピシッ…と、亀裂の生じる嫌な音が鳴り響く。
老木の根が悲鳴を上げている様に思えた。
どうか耐えてくれ、と願いながら、レトは動かぬユノを片手で脇に抱えた。
それに続いてユノのマントのフードに、アルバスが潜り込む。
………このまま強風が吹く前に地上に上がれれば、嬉しい事この上無いのだが…。
………最大の問題は、ユノを抱えたままどうやって登るのか、という点だ。
彼を抱えれば、自由に動くのは残された腕一本のみ。それでは到底……地上に上がれない。
ロープか何かでユノと自分を縛り、登る手もあるが………生憎、そんな物は持ち合わせていなかった。
(………足場は…いつ崩れるか分からない……)
吹雪きの中、固く口を閉ざしたまま、レトは思慮に耽る。
考えても考えても、答えは出ない。煩わしい焦燥感だけが、胸中を駆け巡る。
……どうしよう。