亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――…勘、だった。
……刹那、ザイの鋭い勘は彼の全身を電流の様に駆け巡り、本能を勢いよく突いた。
舌の上まで出かかっていた言葉を飲み込み、ザイは大きく目を見開いたまま………硬直した。
冷や汗が流れる。
悪寒が走る。
足が震える。
空気がやけに、ピリピリと緊張している。
迫り来る、恐怖の再来故に。
「………」
ゆっくりと、ザイは空を見上げた。乾いた眼球に細かな雪が張り付く。小刻みに震える彼の瞳は…。
………頭上で轟々と渦を巻く、真っ青な風の塊を映した。
一度爆発したにもかかわらず、それは巨大で、神々しくて。
………第二の衝撃波が、来る。
しかも、次のは。
―――………最悪の、冷風だ。
「―――…レト…!急ぐんだ!!」
全てを凍て付かせる風が、にじり寄る。
吹き飛ばされるだけでは、済まない。
皆………死ぬ。
…地表でむき出しになっている木の根を掴み、ザイは崖縁から身を乗り出して下方の息子に手を伸ばした。
ある程度登って来れていたレトは、地上まであともう少しという距離にいた。
こちらに手を伸ばす父に、レトは足場の悪いナイフの階段の上でバランスを取りながら手をうんと伸ばすが………あと少しだけ、届かない。
互いにどんなに手を伸ばしても、その二、三十センチの距離は一向に縮まらなかった。
「………そのままだ……そのまま手を伸ばしているんだぞ、レト……」