亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………まずいぞ…」
眉間にしわを寄せたリストの顔が、ほんのりと………青ざめた。
風だけならば防げるが……冷風となると話は別だ。何処かに身を隠さなければ一瞬で凍死してしまう。
……慌て出すリストに反し、イブは何故か飄々と構えていた。余裕まで感じさせる笑顔で、イブはリストの肩を叩き、グッと親指を立てた。
「何焦ってるのよ―。冷風だか何だかよく分かんないけど、“闇溶け”すれば何の問題も無いじゃ―ん」
「………そうか…確かに“闇溶け”なら…!」
「大丈夫よ―。あたしは」
「お前はな!!」
ニヤニヤと嫌らしく笑う薄情なイブに、リストは頭を抱えた。
………ああ、どうして俺は“闇溶け”が出来ないのだろうか。
他の事なら…大体出来るのだが、“闇溶け”に関しては全くもってさっぱりだ。
出来ない…と実感する度に、このじゃじゃ馬女と執務官長の魔王ダリルから腹の立つ冷笑を浴びている。
………つい一年程前まで、“闇溶け”をやった事も無ければ全く知らなかったジンでさえもすぐにマスターしたというのに。
……いや、あいつの適応能力は論外か。
「それじゃあ、いつまで経っても出来ないリスト君は、どうしようも無いので“闇入り”で決定~」
「……………また…“闇入り”…」
致し方無いとはいえ……それはもう、苦渋の選択だった。
………また、身体がしばらく凍えるのか。
「はいは―い、それじゃ、“闇入り”するからちょっと動かないでよ―。ダリル程ぱぱっと上手くは出来ないんだから」
愉快愉快…と笑いながらそう言って、イブはリストの肩に手を置いた。
……肌を刺す冷たい風が、豪雨の如き勢いで落ちてきた。