亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………オルディオ……『鏡』は…何も応えないのか…?」
そう言って、黒槍は薄暗い天井を見上げた。
四方八方が岩壁で覆われたこの空間。凸凹したその天井は薄汚れていて、行き場の無い砂埃を纏っている。
一見、何も無い天井なのだが………よく目を凝らして見れば………そこには、いる。
……点の様な、小さな影。それは時折小さく動き、天井を時折移動する。
……ドールは存命か、様子はどうなのか。
それらを唯一知る事が出来る手段が………………あの天井に止まる、蝶だ。
頭上を舞う火の粉の如き真っ赤な羽を持つ蝶は、ただ静かに羽を休ませていた。
「………何にも…まだ…」
応えぬオルディオに代わりに、少女が小さな声で呟く。
盛大な黒槍の溜息が、室内に響き渡った。
「………『鏡』は便利だが………ドールから何かしない限り何も出来ないってのが難点だな…」
白槍は肩を竦めて見せ、頭を抱えた。隣りの少女は石を転がすばかりで、気にも止めていない。
「………待つしかないだろ」
「……………待つ……ね…」
こちらからいくら探ろうと試みても、答えは出ない。
ただただ、待つしかないだろう。
赤槍…ドールは、大丈夫なのだろうか。
この地に残された彼女の配下達が死ぬ程心配している事など、彼女は知るまい。
……中には、単独で行動に出ようという火種になり得る危ない輩もいる。
長の不在は、群れの崩壊を招き兼ねないのだ。
待つしかない。
待つしかないのか。
変わらぬ焚き火の明りから逃れる様に、オルディオは静かに、瞼を閉じた。