亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
手紙、というものは、紙に書かれたものとは限らない。
このデイファレトでは、紙という物は大変高価な物に値する。
製紙で扱う主な原料は勿論木である。そんな原料ならば、この極寒の地に鬱蒼と生い茂る森の木々があるではないか………と思うのは山々なのだが、何事にも問題というものは付き物であって、これもやはりそれは存在する。
まず第一に、原料の木に問題がある。
この極寒の地デイファレトでは、ほぼ年中が厳しい冬であり、雨の代わりに雪が降る。
おまけに度々『嵐』が発生するため、地形は毎日の様に変わっている。
そんな過酷な環境に耐えてきたデイファレトの木は、どれも逞しく巨大なのだが…。
いざ伐木してみれば、大きな木の中はすっからかんなのだ。隙間だらけで、使い物にならない。
雪国の樹々は、巨大だがどれも重度の骨粗鬆症。
その原因は、極度の雨と日光の不足にある。要は、栄養不足なのだ。
………それでも、背に腹は代えられぬと割り切って伐木すればいいのだが………………そう簡単に出来ない理由が、もう一つある。
それは、街の民が敬遠する………泣く子も黙る、狩人の存在だ。
自然と共に生き、自然を重んじ、自然を神と崇める彼等は………正直な話、伐木を快く思ってはいない。
街に住まない…否、住めない彼等にとって、森は唯一の居場所。そこを削られるというのは耐えがたい事態なのである。
狩人は、街の民には何も口出しはしないが………その注ぐ視線が、妙に怖いのだ。
伐木している街の民の中には、狩人から睨まれた者もいるという。
………彼等は何もしない、危害は加えない……と分かっているのだが。