亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………どうもやり辛いし…後ろめたい。
あの禍々しい剣で斬られやしないだろうか。
あの血に汚れた剛腕で首をもぎ取られやしないだろうか。
何を飲み食いしているのか分からないあの口で、噛まれたりしないだろうか。
………狩人に対する民の偏見は、凄まじい。同じ人として見ていない場合もある。
そんな裏事情故に、自然、紙は貴重で高価な物と化した。
こんな贅沢なものを何食わぬ顔で所持しているのは、王政が崩壊してからも領主の顔をして存在し続けるお偉い貴族様ぐらいだろうか。
街の民のほとんどはこの紙を持っていないため、紙の代わりに布を使ったり、伝言という形で他人に伝えてもらったりしている。
狩人の場合は………彼等の社会的立場や文化から、まず、紙など使わない。紙という存在さえも珍品である。
…それ故、唯一の紙である地図は重宝している。
狩人もまた、伝言といった他人を使った方法がほとんど。
麻布に書いたりもするが、文字を書けない者が多いため、こちらはあまり使われない。
―――だから、文字の書いてある木の皮…いわゆる手紙という物を改めて前にした時………。
一瞬少しだけ、違和感を感じた。
手紙を書く事が出来る……それ即ち、この手紙の書き手が学のある者であることを意味する。
目の前にある木の皮に書かれた手紙は、やけに丁寧に剥がされた皮で、クルクルと筒状に巻かれている。
その厚さからみて、文の内容は長い様だ。
………薄暗がりにあるそれをじっと凝視しつつも…手に取って読もうはしない。