亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
誰からの手紙なのか。どういった内容なのか。
この文一つについて尋ねたい事は山とあるが…。………手に取るよりまずはこの手紙を持ってきた者から話を聞く事が先決。
そう思いながら、手紙に注いでいた鋭い視線を、向かい側で膝を突き、恭しく頭を下げている人影に移した。
適当に切り揃えた銀髪が、この暗がりでもやけに輝いて見える。………女の髪というものは、何故あんなにも光沢を放つのか。
「―――…久しいな、マナ。最後に会ったのはいつだったか……………息子は息災か?」
「…本にお久しゅう御座います神官様。……ダンテでしたら、相変わらずで御座います」
…そう言って、マナは顔を上げた。
常に笑顔の彼女だが、この『神官』の前にいる時ばかりは、いつもの笑みは引っ込んでいた。
息子のダンテも一緒に『神官』に謁見することは出来ないため、彼は外で待たせている。
―――神官、と呼ばれたこの初老の男。
病人の様な青白い肌に加え、骨と皮だけと言っていい程の細い身体は、見ているだけでなんだか痛々しい。
目も開けているのかいないのか…全く生気が感じられず、紫色の唇は空気同然の声しか漏らしていない。
………今にも倒れて死にそう…いや、実は死んでいるのではないかとさえ思わせる男だが……当の本人は別段苦しげでもないし、当然ながら息もしている。
………一見、ここが何処なのか分からない…とにかく分かるのは薄暗い空間というだけのこの場で、二人は向き合っていた。
神官は室内に孤立した古い椅子に腰掛けており、跪くマナを見下ろしていた。
…深い息を吐き、神官は再びその血色の悪い唇を開いた。