亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「…少し手間は取りましたが、賊共の討伐は実行出来そうですねぇ。忌ま忌ましい三槍の内、赤槍はこれでおさらば。…白槍と黒槍も流れに乗っていただければ最高に嬉しいのですが…残念な事に、それは無理でしょうね」
バリアンの反国家組織である、赤槍、白槍、黒槍の…通称三槍。
今回の策で赤槍は潰せそうだが、あと二つはさすがに不可能だろう。
白と黒の長はまだまだ若い青二才だが、罠に飛び込んでくる様な馬鹿ではない。思慮に長けた青二才である。
今回の件……白も黒も、どう出るのか。なかなか見物だ。
「そう言えばまだ伺っていないのですが、お二人の王子は賊討伐時は如何なさる気なのですかねぇ?」
ケインツェルは、大して興味が湧かなかったらしい本を無造作に投げ捨てた。
巨大な本棚の壁を上から下まで眺めながら、少しずつ奥へと移動していく。
「はっ。以前伺いましたが……お二人共……『興味が無い』とおっしゃられまして…」
「おやおや。もう少し政治に関心を抱いてほしいものですねぇ。リイザ様は毎度の事ですが…アイラ様はこのところ何に関しても上の空と聞きますよ。飽きたの何だのと、まぁ自由なお方な事ですねぇ」
かなり古い書物が収まっている本棚に移動し、埃を掃いながらあさくった。
積み重なった書物以外にも、貴重な鉱石の類いが入っている箱や壷が奥に並んでいる。
手当たり次第に掴み、長年触れられてもいなかったであろうその蓋を開けたり閉めたりと繰り返した。
「…陛下は、明日は必ず謁見の間にお出でになってくれるのでしょうか…?」
引き篭りの老王が出て来なければ賊討伐は出来ない。他に誰が指揮を取るというのか。
不安げに俯く兵士を傍目に、ケインツェルは妙な歌を口ずさむ。
棚の最奥に埋もれていた古い箱を他同様に引き寄せた。やけにたくさんの錠前がされていた様だが、全て外されている。妙に軽いその箱を何気なく開けた。