亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

少し気の強そうな可愛い顔が、今は般若のごとき形相に見える。
ハイネは溜め息混じりに肩を竦める。

「………昼間、あの妙な女から腹に蹴り入れられたじゃないですか。しかもなかなか強力な。………今もまだ痛い筈ですよ。打撲みたいになってましたよ…痕が残らなきゃ良いですけどね…」

「………あ、あんたっ!?あたしが気絶してる間に脱がしたわけ!?何勝手に見てるのよ!!レディに対して…。…おおお、お嫁に…いけないっ…!…最低!!変態!!」

「…あのですねぇ………言っときますけど俺、ロリコンじゃないですから。……12歳の幼児体型見たって何も感じませ…痛っ…!」


羞恥心から真っ赤になっていたドールだったが怒り狂い出し、砂利の混じった雪の塊を投げ付けてきた。

あんたは一言多いのよ!、と罵声と雪を大量に浴びせた後、ドールは再び不機嫌な様子で俯いてしまった。




「…思い出しても腹が立つわ、あの女…!」

一体、何処のどいつなのだろう。
あの容姿からして、バリアンの人間ではない。デイファレトかフェンネル辺りではないかと思うが、近年は各国からの移民増加に伴い混血の人間が増えてきているため、容姿だけで正確に区別することは出来ない。
バリアンにも、少数だが金髪や銀髪はいる。


…眼帯をした灰色の髪の男と、真っ黒な獣を連れた……奇妙な女。…何とも言えない不思議な雰囲気を醸し出していた。

素姓は全く分からないが………まず、味方ではないだろう。
王族の少年と狩人を守るような素振りを見せていた。


(………腹が立つと言えば…あの狩人のガキもムカつく…!)

どうせ金で雇われているくせに、ごちゃごちゃと下らない事を叫んで、身を挺して…必死に…。

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