亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――!?」
グイッと引っ張られるような妙な感覚と同時に、突如、立つこともままならないドールの身体がふわりと浮いた。
予想外の感覚に思わず開いたドールの目には……あっという間に遠くなっていく地上。
自分を囲んでいた兵士や、ゼオスの姿は、目下で徐々に小さくなっていく。
…いつの間に、這い出て来たのだろうか。
ついさっきまで力無く横たわっていたサラマンダーが、今はしっかりと足でドールを掴み、吹雪の夜空へと上昇しているではないか。
「―――…ハイネ…!!」
困惑する中、慌てて地上へと視線を移せば………こちらを見上げるハイネの姿があった。
剣を杖代わりにして、なんとか立っている。
彼が、サラマンダーにドールを連れて逃げるよう指示したのだ。
そうに違いない。
…けれど。
「ハイネ……ハイネ…!!…ハイネ!!……何でよ…どうしてよ!!……ハイネ!ハイネ!!」
次第に小さく、そして見えなくなっていく彼に向かって、ドールは手を伸ばしながら叫んだ。
こんなの、嫌だ。
どうして、あたしなんかを助けるのだ。
昔からそうだ。
お父様と自分の役に立とうと、馬鹿みたいに一人必死で…いつも一緒で…。
でも、だからって。
「―――…ハイネ……ハイネェ―…!!」
ドールの悲痛な叫びを連れて、真っ赤な怪鳥は闇へと姿を消した。
少女の叫びの余韻は、吹雪の歌声に、掻き消された。