亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~







「生意気な真似をしやがって…!!」



















せっかくの獲物を殺し損ねたことに、激しく苛立つゼオス。

剣を振りかざした途端、サラマンダーが洞穴からこちらに突進して来たのだ。
予想外の不意打ちに切るタイミングが狂ったことに加え、怪鳥は獲物を掴んであっという間に飛び去ってしまった。




…本の数秒の間、だった。







奥歯を噛み締め、切る対象がいなくなった用無しの剣を思い切り地面に突き立て………ゼオスは、洞穴の入口で佇むハイネに振り返った。


目が合うや否や、ハイネは意地の悪い笑みを浮かべた。






周囲のバリアン兵士達の中で、動揺が広がる。
その内の一人がゼオスに走り寄り、小声で耳打ちしてきた。


「………この温度と気候です。サラマンダーは衰弱していたようですし、長くは飛べますまい。すぐに、死ぬ筈…。それに、あの娘も深手を負っております。出血の量から見ても、こちらも時間の問題です。………放っておいても問題では無い…かと」

「………うるせぇ。…ごちゃごちゃ言ってねぇで、すぐに追跡しろ…!………腹の虫がおさまらねぇんだよ!!」












「追跡はさせない。あんた達皆、ここで死んでくれ」







兵士の頭をひっ叩いて罵倒するゼオスに、ハイネはやけに落ち着いた声を漏らした。
ゼオスを含め、その場にいる兵士達は皆、ハイネに向き直る。







「………あ?…てめぇ独りで…何をほざいてやがる…」

「死んでくれって言ったんだ。二度も言わせるな。………ほざいてなんかいねぇよ…大真面目な話さ…」



場の空気が、殺意によって一気にピリピリと張り詰めた。険悪な表情を浮かべるゼオスが、突き立てていた剣を引き抜き、大股でゆっくりと歩み寄ってくる。

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