亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
薄々、そんな気はしていた。
『鏡』に映る、虫の息で俯く大長の姿を見る度に、奇妙な不安は募る一方だった。
大長は、彼は…死んでいるのではないだろうか。あの老王やその下のバリアン兵士が、反国家組織の極めて重大な危険人物を生かしている筈がない。
奴らは、呆れるほど短気で、血の気の多い連中なのだから。
…だが、そんな大長というたった一人の父親を生きる支えとしているドールに…言える筈も無く。
……膨らむばかりの不安を強引に抑えて、そっと…自分でも気付かない所にしまい込んだ。
大長……。
貴方の娘は、女ながらに、幼いながらに…弱音一つ零さず気丈に振る舞って…一度も泣きもせずに ………貴方の代わりに赤槍を率いておりました。
鎚を肩に抱えて仁王立ちする姿は、貴方そっくりでした。
本当に、そっくりで。
………。
(…………何年前、でしょうか…大長。………親兄弟、皆死んじまって…飢えて、浮浪者みたいにさ迷ってたガキの俺を………拾って…くれたのは)
空を見上げたまま、ハイネは鎚を両手で握り。
ゆっくりと持ち上げた。
………すみません、大長。
貴女の娘には怪我一つさせないと、昔…誓っていたのに。
…血を流させてしまいました。
あの出血だ……危ないかもしれません。………加えてこの未踏の地に、たった一人です。………もう…神頼みしかありません。
「………何をする気だ…」
頭上に構えた鎚は…攻撃の体勢では、なかった。
戦意も何も感じられない。目の前の、このボロボロの男は……空を仰ぎ見て…ただ、笑っている。
ゼオスは、歩みを止めた。