亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――」
苛々して、苛々して、苛々して。
そんな顔、見たくない。もうこんな所になんか来るものか。
そう叫んで、踵を返して、ギュッと目をつむって……次に目を開ければ。
………真っ暗な、見慣れない天井がそこにはあった。
空気は外と変わらず乾燥していたが、何処かに暖炉か何かがあるのか、ほんのりと暖かい。厚手の毛布が掛けられた身体は芯から温まっている。
…だが、身体の節々がとても痛い。指一本動かすのも億劫で、深呼吸をしようとすれば胸に鈍痛が走って息が詰まった。
なんだか酷く気持ちが悪いし、起きて早々体調は最悪だ。
風邪でも引いた後の様な気怠さと言うか…何と言うか。
(……………………僕は…どうしたんだっけ………?)
…身体の不調はひとまず置いておいて、ふと冷静になってみれば………この、見知らぬ室内で横になっている現状が、把握出来ない事に気が付いた。
目が覚める前、何をしていたのかよく覚えていない。
そもそもどうして寝ていたのだろうか。頭痛がする今の頭を探っても、寒いとか苦しいとかいう感覚しか覚えていない。
………。
………なんだか、甘い匂いがする。気のせいだろうか。
…それに、加えて。
「ねーねー、イーオさん。砂糖とか無い?思いっ切りぶっかけて食べたいんだけど」
「お前まだ食うか!?遠慮って言葉を知らないのかよ!!つーか話を聞け話を!!一人だけ飢えてんじゃねーよ!!」
「そんなこと言ったってあげないからね!!一欠けらもあげないからね―だ!」
「いらねぇよ!!」
………うるさい。
凄くうるさい。
隣の部屋だろうか。馬鹿らしい内容の怒鳴りあいが続いている。