亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

「…じゃれ合ってる子犬みたい。………どっちも人形みたいに綺麗だし。………美味しそう」

「最後の台詞は撤回しろ」

既にパイを平らげたというのに、二人の少年を見詰めながら涎を垂らすイブ。
その危ない食欲で満たされた頭を、リストはパシーンと軽く叩いた。いい音が出た。






「………ここには僕以外、君とアルバスだけなの?………ザイと、お母様は…?」

思い出した様に、ユノは室内をキョロキョロと見回して言った。
レトを見て安心したのか、イブやリスト、イーオに向ける視線には、先程の様な敵意は無い。


レトは一瞬口篭り、困った様な表情を浮かべて首を傾げた。







「………え…と…。………色々、あったんだ。………何処から話せばいいかな…」













そう…何処から話を切り出そうか。
































闇を照らすそれは、自らの熱を冷たい夜気に曝して更に大きく、そして全てを喰らおうと何度も爆ぜる。

その熱く赤い舌で嘗めあげ、ゆっくりと味わうかの様にじわりじわりと燃え広げていく炎は、まるで巨大な焚火に見えた。

…孤立した昼間の如き世界からは、数知れない叫び声や女子供の悲鳴が聞こえてきた。
…熱気が、風に乗って吹き飛んでくる。
焦げ臭い煙と熱気、そして悲鳴を、丘の上からただただ傍観し、傍聴していた。





首都程ではないが、第二の首都と言っても過言ではない、それなりに人口の多い街。
昼でも夜でも静かな活気のあるその街は今、どういう訳か………火に包まれていた。



…火元は、街の奥にあるとある屋敷からだった。大きな家屋が密集した街であったため、火が燃え移るのはあっという間だった様だ。

時間が経つにつれ、次第に大きくなっていく火事に、街の民は火を消そうとしているようだが、火が大きすぎる。
我先に、と逃げる人間がほとんどである。
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