亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「何て言うか………とにかく妙よ。…妙なの。………………空気も、風も、雪も……とにかく全部が…」

「………妙ねぇ………………やっぱり、マナもそう思うか」















妙だ。

何が、とは言えない。
言葉では言い表せない、抽象的過ぎて分からない何かが。
規模の大きすぎる、何かが。

ここ数日間、このデイファレトの地は何かがおかしい。
………今までとは違う、奇妙な変化が多々…表に出て来ている。

………最初は、気のせいだと思った。

だが全身に感じるその違和感は時が経つにつれ、大きく膨らんでいく一方。
天敵の気配を感じ取ったはいいが、いつ何処から来るのか分からない…という、そんな感覚が続いている。

本能が、怯えている。いずれ来るであろう、避けられない何かに、震えている。
そしてその違和感は、到頭目に見えるものへと変貌してきていた。


「…色々、おかしいよ。………産卵期の獣が、卵を放置したまま巣穴に帰って来なかったり………共食いをしていたり………つい先日なんかは、人間の前には出て来ない筈の獣が群れで小さな街を襲った。…街は、全滅。散々食い散らかした後、ほとんどの獣はお互いを殺し合ったり…自分から崖に落ちたり………とにかく、訳が分からない…」

…今まで見てきた奇妙な光景を思い出しながら、ダンテは溜め息を吐いた。




狂っている。

何もかも。




そしてそれはどんどん、激しくなっていく。




















「………戦士の月が昇る夜…何が起きるんだよ」

「………さぁ…」


























「神の意思は、人間の知るところではないわ」
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