亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――…これまでの経緯はよーく理解したよ。貴方方に一応言っておきます、助けてくれてアリガトウ。このパイ美味しいね、なかなかじゃない?」
「なんだこのムカつく王子様は」
だいぶ顔色が良くなり口数も徐々に増えてきたユノは、礼儀正しく椅子に腰掛けイーオがどうぞと出してきたパイを、貴族らしい上品な様子で口に運ぶ。
食べながら、しかも目を合わせようともせず、イブとリストに礼には聞こえない礼をさらりと放った。
素直じゃない…少々性格が捻くれた少年である。
…あからさまに顔をしかめる二人に見向きもせず、ユノは熱い紅茶を啜る。
「あ、もう一つだけ言っておきますけど。僕、貴方方を信用してなんかいませんから。これっぽっちも」
「……うー……可愛い顔して言う事きつくない?」
ルウナ様はいいけどこの王子様は素直じゃないから嫌―い、と愚痴を漏らすイブ。
信用無し宣言というやけに辛辣な言葉を吐くユノの態度に、傍で聞いている方のレトはオロオロと無言で俯いている。
周りからの視線が…なんだが痛い。
………サリッサは、いつもこんな気持ちだったのだろうか。まさかこんなところで親の心境を知るとは思いもしなかったレトである。
「…デイファレトの王族…かぁ。………こんなちびっ子がうちの隊長と同じ身分なんだー…。………世界って広いね」
「フェンネルとデイファレトは大昔、友好条約とか結んでいて歴史上ではそれなりに親交は深いんだぞ。…敵と思われるのは…」
「誰も貴方方が敵って言ってない。それにその友好条約って本当にあったか証拠付けるものは無いんじゃないの?………あったとしても、とっくの昔に条約解けてるじゃないか」
…ああ言えば、こう言う。
………減らず口を叩くユノの印象が、次第に悪くなっていく。