亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………」
柔らかなイーオの笑みが向けられたユノは、ただ無言だった。
その病とやらの存在は、ユノもよく知っていた。
………なにせ、イーオの言う通り曾祖父ばかりでなく………父もその病に殺されたのだから。
もしこのまま敵に見付からずに城へたどり着き、無事王となれたら、ユノは当時13歳という若さで君臨した51世よりも若い…最年少の王になるだろう。
「………戦争の計画は、デイファレト王50世の時に色濃くなっていったの。………極秘とされていた話は、私にも伝えられたわ。…私は一応……陛下のお気に入りだったからね。………私は、すぐに反対したわ。その内…陛下とこの国に…天罰が下りますって。………笑って返されてしまったけど」
それから…一年足らず。50世は病により、崩御されてしまった。
裏で進んでいた計画は途中で断念。
その後、すぐに若き王…51世が君臨した。
「………51世は、先代の様な危険思想は持っていなかったの。…平和主義の、優しい少年王。………私を召し抱えてくれた50世の死は悲しかったわ。だけど、私は………その反面、ホッとしていたの」
………戦の話は無くなったことで、また…暖かい春が来るようになるだろう。
…この病も無くなるだろう。
少女のイーオは、そう思っていた。
そうであることを…願っていた。
「…けど、そこに………バリアンの猛威が、牙を向けてきたんだ」
…イーオから視線を外し、ユノは床を見下ろしたまま呟いた。
小さなブーツの爪先が単調なリズムを刻んで床を突く。
「………そのバリアンの襲来は、今までに無いほど粗暴で、無礼で、容赦無くて…強力だった。………君臨したばかりの幼い王は、その猛威への対応が遅れた…」