亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
その、襲来してきた無礼なバリアンの当時の王というのが…。
「………その、度を越えた傍若無人で人を人と思わない非情な……当時、破壊王と呼ばれたバリアン王50世………………現在も王位についている、老王様よ」
「………本当に…飽きれちゃうよね」
そう言って、ユノはやれやれと肩を竦めて見せた。祖父の51世を玉座から追いやり、王政崩壊を招いたバリアンの老王はそれでも飽き足らず…命からがら逃げ延びていた子孫のユノまでも殺そうと動いている。
どうしようも無いバリアンの執拗な敵意は、デイファレトの王族の子々孫々にまで及んでいるのだ。
激しい攻防によって、デイファレトの城に宿る守人の力は徐々に弱まり、とうとう城を守ることは不可能となった。
…若きデイファレト王51世は戦火から逃れるべく、苦渋の決断により城を捨てた。
無人となった城は…魔の者、ノアが新たな守人となり、現在まで独りで守り続けている………というのが、王政崩壊の経緯だ。
…光と影に塗れた歴史。
二人の話をひたすらじっと聞いていたイブとリストだったが、釈然としない様子のイブが首を傾げる。
「…よーく分かった。よーく分かったよ?…バリアンの老王様が戦好きってのは分かるよ?………でもさぁ………ちょっと、しつこ過ぎやしない?王政崩壊出来たのに、なんでそこのユノ王子まで殺さないと気が済まない訳?………根絶やし主義とか?」
「………まぁ、そうだな…」
根絶やし主義…と言ってしまえばそれで納得いくが………………何と言うか、今回の王族暗殺は…。
(………私怨…っぽくないか…?)
老王個人の、恨みか何かにも思える。
王族暗殺に必死なバリアン。
老王は…何か恨んでいるのではないだろうか?
戦争の後は引きこもってしまったとも聞くし…。