ツインの絆

「そんなに早くから。」



あきらが中学時代はすごい暴走族だったと言う事は、何となく聞いていたが、
小学校の後半から不良だとは知らなかった。


少なくともここにいる広志を初め、大輔、孝輔も知らないことだ。



「ああ、家庭に問題があって、あきらの反抗期は早かった。
まあ、体も大きかったから、精神的にも成長していたのかも知れない。」


「だって… 家庭って、あの水島さんの子供でしょ。
俺、どうしてあきらさんが暴走族に入っていたのか分からなかった。
水島さんって、おばさんの同級生って言っても、すごくおとなしい感じで、
会計士という知的な職業なのに… 」



大輔は自分のことは忘れたように、あきらへの疑問をぶつけている。

一緒にいる孝輔も黙って話を聞いている。


広志も詳しい事は知らないらしく、孝太の話を聞くつもりで、
まだ片付けていない湯飲みを出して皆にお茶を出す用意をしている。


昼間買い込んだ甘いものを、
学校帰りの大輔に食べさせてやろうと言う兄心のようなものが感じられる。




「水島さんの家は親の代からあそこで会計士をしていた。
しかし、水島さんの上二人の子供が小学生の頃奥さんが病死、
それからは母親の光代さんと言う人が、水島さんと子ども達の世話をして来た。

その光代さんと言うのは厳しい気性の人で、
水島さんも子供の頃から頭が上がらなかったらしい。
まあ、一人息子でおとなしい性格の水島さんを、
何とかして父親の跡を継げるように、と頑張っていた人のようだ。」



と、孝太は水島家の事情のような話からはじめた。



「しかし、水島さんはその生活に息苦しくなり、
真面目一筋の人だったから仕事はきちんとこなしていたが、
夜になると、それほど飲めないのに飲み屋をはしごするようになった。

そして、小さなスナックで働いていたあきらの母親と恋に落ちた。
そして間もなくあきらが生まれ… 
水島さんは朝になると実家に戻り仕事をし、夕食までは実家で家族と一緒、
それからあきらたちのいるアパートへ、という二重生活を続けていた。」



そこまで話して、孝太は広志が入れてくれたお茶を飲んだ。
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