ツインの絆
「ところがあきらが三年生になった頃、母親が急死。
水島さんは迷った挙句、あきらを家に引き取った。
その頃には、厳しい祖母との生活に嫌気を感じていた上二人の兄達は、
寄宿舎のある東京の高校へ入り、ほとんど帰らなかったらしい。
あきらは水島さんとは違い、
子供の頃から物怖じしない活発で天真爛漫な子だったようだ。
だから、祖母に何か言われるといちいち反抗するようになり、
四年生頃から下校時、まっすぐ家に帰らず、
ゲームセンターで遊ぶようになり、万引きも…
五年生で補導された事もあったそうだ。」
四年生で万引き… ゲームセンターで遊ぶ金ほしさ。
家に居場所がなかったからだ。
四年生なら、自分は剣道を始めて、楽しくて堪らなかった、と大輔は思い出している。
うちにはやさしいばあちゃんがいた。
孝輔も… あの頃からバイオリンに魅せられていた、と振り返っている。
「中学のことは有名だから知っているだろう。
まともに授業に出る事無く、家を出ると学校を素通りし、
バイクだろうと自転車だろうとお構い無しに無断借用。
豊田まで行き、そこの暴走族と合流しては暴れていたらしい。
体が大きかった事と度胸があった事で喧嘩も強く、
高校生と言っても疑われなかったようだ。
まあ、あきら曰く、岡崎に迷惑は掛けなかった、そうだ。」
そう言って、孝太は苦笑いをしている。
「じゃあ、無免許でオートバイを。」
そんなことは当たり前だ、暴走族ならもっと危ない事も…
無関係な世界だったが、ニュースや新聞に、
今でも彼らの傍若無人な行動が載る事もある。
分かってはいても、それがあきらとなれば、
思わず言葉に出ている大輔だ。
自分たちが信頼している広志が、いや、和也や悟も、だが、
兄のように慕っているのが、そのあきらだ。
自分たちは… まともに話したことはない。