ツインの絆

父はそれを希望した。


ハーバードの卒業式で悟のためと言いながら、
悟自信も参加して大騒ぎした、と言うことは
広志から聞き記憶に新しいことだったが… 




「あれは… 楽譜が無ければ弾けないよ。
僕… あの歌は知らないし。」



孝輔は慌てて正直なところを話した。


和也が曾祖母の部屋でテレビを見ているところに、
たまたま部屋へ行き、何となく見たことはあった。


が、元々母が好まなかったあの手のアニメは、
小学校時代から見なかった。


しかし学校でもかなり評判になった時期もあったから、
どんなものかは知っている。


あんなのをバイオリンで弾く事が出来るものか。


心の中でそう叫びながら知らないと言った。



「なあに、適当でいい。
俺もあいつらがあんな事をする事自体恥ずかしくてたまらないが、
終わってみれば不思議と楽しい気分が残る。
今フッと思い出した。孝輔、お前なら弾けるさ。」



父は僕を天才のように思っているのか。


そんな事は出来ない。絶対に出来ない。


そう心の中では思っているのに、はっきりと断われない孝輔は無意識に大輔を見た。




「孝輔、やれよ。俺が歌う。
俺もまともには知らないけど… 
ばあちゃんのテレビのところに和ちゃん用のDVDがある。
あれをかけながらパフォーマンスだ。

父さん、和ちゃんでは無いから、あんなことは出来ないぞ。」



大輔が孝輔の心を読んだように、いつものごとく助け舟をかって出た。



「当たり前だ。お前たちまであんな事をしたらこの家は壊滅だ。」



と、父は嬉しそうな声を出し、大袈裟に騒いでいる。


父のこんな声、こんな楽しそうな顔も久しぶりだ。

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