ツインの絆
孝輔は散々家族に迷惑を掛けた自分が口にするような事ではないが、と思いながら父を見た。
思ったとおり大輔はこっちを睨んでいる。
「孝輔、あんな奴の事なんか放っておけばいい。
あいつのせいで孝輔は… 」
大輔は睨むだけでは済まないように声を張り上げた。
その様子を見て孝輔はすぐ後悔した。
やっぱり言わなければ良かった…
孝輔は、自分の方を見ている父を意識して思わずうつむいた。
父は黙って自分を見ている。
退学までして世話をかけたのに、その事を忘れたように、
人のことに口を挟む厄介な奴と思っているのだろう。
そう思うと居たたまれないような気持に襲われ、
顔を上げることが出来なかった。
「真理子のことか。あいつは産むと言っている。
もう六か月に入っているから中絶は無理だ。」
寝転んでいた父はゆっくりと体を起こし、
感情も露わに怒っている大輔と、
うつむいたままの孝輔を交互に見ながら口を開いた。
その言葉は淡々として真意は分らない。
ただ姉弟だから状況は知らせておこう、という気持がうかがえるだけだ。
「父さん、あんな奴の事は放っておこうよ。
俺、大嫌いだ。あんなふしだらな女が姉弟だなんて…
俺、気持ち的には縁を切っている。
あんなのは母さん以下だ。」
「大輔… 」
孝輔はその大輔の激しい言葉に驚いた。
大輔が真理子をそれほど嫌っていたとは考えなかった。
大輔のその言葉で、三人の間を漂っていた空気が一変し、
ピリピリとした電流のようなものに変っている。
余計な事を言ってしまった。
自分の不用意な言葉から生じたこの雰囲気に、
孝輔は泣きたいような気持になり、
顔を上げ、怒りを表わした顔をしたまま自分を睨んでいる大輔を見ている。