君に幸せの唄を奏でよう。
「…初めて会った時、お前が歌ってるのを聴いてイライラしたんだ。昔の俺を見ているみたいで」
やっぱり、音楽してたんだ……。
「だから、お前に八つ当たりで言ったんだ。本当は、お前の歌を聴いて不愉快なんて思わなかったのに」
じゃあ、あたしの歌は憎くないんだ…。
橘 奏のその言葉が、純粋に嬉しかった。
「それに、俺はお前が羨ましかったのかもしれない」
「あたしが?」
「歌を愛しているから」
そう言った橘 奏の顔は、どこか寂しい表情をする。その表情を見た途端、胸が押し潰される感じがした。
『“愛しているからこそ憎い”』
音夜の言う通りだ。橘 奏は、歌を愛してたんだ…。
「だけど、俺は捨てたんだ。“あの日”から」
「あの日から…?」
あたしは思わず、聞き返してしまった。橘 奏は、黙り込んでしまった。
「ごめん!嫌なら言わなくていいから!」
これ以上、掘り出して橘 奏を苦しめたら意味ないじゃない!あたしのバカ!