闇夜の略奪者 The Best BondS-1
「嫌い。あたし鼻いいの」
「そうなんだ、ごめんね?」
ジストはエナが何か言うより早く革が巻かれたジッポライターで火を点けた。煙草を奪って消してやろうかとも思ったが、情報を聞き出したいと思っているエナが強く出れる筈もなく、不承不承ではあるがそれを黙認することにした。
「で? 報酬は?」
紫煙を燻(クユ)らせながらジストは再度聞いた。
「この場合、相場はいくら?」
情報は比較的安値で取引される。
だが、金を生む情報と同じくらい、裏社会の情報は高値がつく。
買う方もだが、売るほうにもリスクが生じるというのが高値の理由だ。
「そうだなぁ、エナちゃんなら……えっち一回ってトコ?」
惚れた弱味だ、と何処か誇らしげに胸を張っている。対するエナは鼻の根に皺を寄せた。
「……真剣に聞いてんだけど?」
「だから真剣に答えてるじゃあないか」
灰皿を引き寄せながら言うジストの姿は余りにも自然で、真剣かと問われれば真剣なのかもしれないと思わせた。
とんでもない高値を提示された方がマシだった、とエナは額を手で覆い、大きく息を吐き中指でこめかみを何度か叩いた。
「やっぱ金額にしな……」
「しない。ジストさん、別にお金に困ってないもん」
言葉尻を奪っての即答に、これは説得の余地無しと見る。
「んー……じゃあデート一回てのは?」
捻り出した妥協案にエナは上目遣いでジストの反応を見る。
「いきなり大幅に値切るんだね。でも僕、男の子だけど大人だから、それじゃあ心は満足できても体が納得しないんだ」
ジストは、駄目駄目、と手を翻してみせたが、エナは口の端を少し吊り上げて笑った。話に乗ってきたというのを察知した為だ。
容姿に絶対の自信を持っている彼は、デート一回で女を落とす自信もあるのだろう。
エナはふんぞり返って足を組んだ。
「デートであたしを虜にすれば? 大人、なんでしょ?」
逆手に取った発言に彼は、人の願望ばかり集めて造られたような容姿には全く以って似合わない独り言を吐露し始めた。
でもエナちゃんガード固そうだしな、だとか、まあ和姦の必要も無いか、だとか、逆にそっちの方が燃えるかも、だとかいうのが其れである。
「そうなんだ、ごめんね?」
ジストはエナが何か言うより早く革が巻かれたジッポライターで火を点けた。煙草を奪って消してやろうかとも思ったが、情報を聞き出したいと思っているエナが強く出れる筈もなく、不承不承ではあるがそれを黙認することにした。
「で? 報酬は?」
紫煙を燻(クユ)らせながらジストは再度聞いた。
「この場合、相場はいくら?」
情報は比較的安値で取引される。
だが、金を生む情報と同じくらい、裏社会の情報は高値がつく。
買う方もだが、売るほうにもリスクが生じるというのが高値の理由だ。
「そうだなぁ、エナちゃんなら……えっち一回ってトコ?」
惚れた弱味だ、と何処か誇らしげに胸を張っている。対するエナは鼻の根に皺を寄せた。
「……真剣に聞いてんだけど?」
「だから真剣に答えてるじゃあないか」
灰皿を引き寄せながら言うジストの姿は余りにも自然で、真剣かと問われれば真剣なのかもしれないと思わせた。
とんでもない高値を提示された方がマシだった、とエナは額を手で覆い、大きく息を吐き中指でこめかみを何度か叩いた。
「やっぱ金額にしな……」
「しない。ジストさん、別にお金に困ってないもん」
言葉尻を奪っての即答に、これは説得の余地無しと見る。
「んー……じゃあデート一回てのは?」
捻り出した妥協案にエナは上目遣いでジストの反応を見る。
「いきなり大幅に値切るんだね。でも僕、男の子だけど大人だから、それじゃあ心は満足できても体が納得しないんだ」
ジストは、駄目駄目、と手を翻してみせたが、エナは口の端を少し吊り上げて笑った。話に乗ってきたというのを察知した為だ。
容姿に絶対の自信を持っている彼は、デート一回で女を落とす自信もあるのだろう。
エナはふんぞり返って足を組んだ。
「デートであたしを虜にすれば? 大人、なんでしょ?」
逆手に取った発言に彼は、人の願望ばかり集めて造られたような容姿には全く以って似合わない独り言を吐露し始めた。
でもエナちゃんガード固そうだしな、だとか、まあ和姦の必要も無いか、だとか、逆にそっちの方が燃えるかも、だとかいうのが其れである。