闇夜の略奪者 The Best BondS-1
 エナは溜め息を吐いて話を戻す。

 「なんでもっと早くに言ってくんなかったの」

 「言ったよ? ジストさん宛てでしょって」

 「……」

 確かにどさくさに紛れて言っていたような気もするが、あんな言葉を信じる奴など居るものか。

 「……わかった。認めたくないけど、なんか疲れてきたからもういいや。信じる」

 これ以上回り道をしたところで、現実は変わらない。それよりもこの疲れる会話を強要する男との時間を早々に切り上げたいとエナは思った。

 「で? 闇屋に何をさせたいの、エナちゃんは?」

 端的に切り込んだジストにエナは深呼吸して思考を切り替える。

 「……ちょっと成り行きでね、泥棒することになったから協力して」

 エナもずばり簡潔に答えた。

 「ど……!?」

 いたいけな少女の口から出たとは思えない単語に大声をあげかけた男の脛を蹴り上げて、エナは人差し指を口にあてて、不敵に笑った。

 「あたしはね、生きる為には手段を選ばないの」
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