闇夜の略奪者 The Best BondS-1
「五日前にトロル村を壊滅させて、昨日の軍会議で見事昇格したの。二百枚を超える頭領を持つ海賊がどれだけ厄介か、エナちゃんわかる?」
ジストは再考を促すように革靴の踵で床を何度か軽く叩いたが、エナの顔に躊躇いが生まれることはなかった。
「だから、あんたに依頼してんじゃない。悪名高い海賊に制裁、くれてやろうよ。ほら、こう考えたら泥棒ってゆーか、むしろ正義じゃん?」
なんて強引な発想の転換。だが、残念ながらジストには海賊に制裁をくれてやる理由もなければ、必要も無い。興味すら無い。
「そんなことに命を張るの?」
「そんなこと? 闇屋やってる人の台詞とは、思えないな。……ねえ」
くすくすと笑った少女の華奢な手が動く。
静かに立ち上がり、前屈みになり、顔を寄せる。
しなやかに弄ぶように、手がジストの顎に添えられ、真っ直ぐな瞳で覗き込まれた。
「……手伝ってくれる?」
立派な色仕掛けだった。
色気など微塵も感じさせない童顔と華奢な体であるのにも関わらず、彼女は自分の魅せ方というものを知っていた。思わず頷きそうになったジストは人に見せられないようなだらしなく緩んだ顔をしていたことだろう。
だがしかし、彼女にとっては残念なことに、彼はもう自身の中で結論を出していた。
「や。断る」
少女は少し目を瞠った。
ジストは再考を促すように革靴の踵で床を何度か軽く叩いたが、エナの顔に躊躇いが生まれることはなかった。
「だから、あんたに依頼してんじゃない。悪名高い海賊に制裁、くれてやろうよ。ほら、こう考えたら泥棒ってゆーか、むしろ正義じゃん?」
なんて強引な発想の転換。だが、残念ながらジストには海賊に制裁をくれてやる理由もなければ、必要も無い。興味すら無い。
「そんなことに命を張るの?」
「そんなこと? 闇屋やってる人の台詞とは、思えないな。……ねえ」
くすくすと笑った少女の華奢な手が動く。
静かに立ち上がり、前屈みになり、顔を寄せる。
しなやかに弄ぶように、手がジストの顎に添えられ、真っ直ぐな瞳で覗き込まれた。
「……手伝ってくれる?」
立派な色仕掛けだった。
色気など微塵も感じさせない童顔と華奢な体であるのにも関わらず、彼女は自分の魅せ方というものを知っていた。思わず頷きそうになったジストは人に見せられないようなだらしなく緩んだ顔をしていたことだろう。
だがしかし、彼女にとっては残念なことに、彼はもう自身の中で結論を出していた。
「や。断る」
少女は少し目を瞠った。