闇夜の略奪者 The Best BondS-1
高らかに名乗り、彼女は地を蹴る。
三節棍と呼ぶには少々長い扱い辛い得物を難なく使いこなし繰り出された攻撃は意外にも隙がない。
回転をつけて打ち込んだエナの三節棍は大鎌の柄によって阻まれたが、その体から陽炎のように発せられる闘志にゼルは背筋を震わせた。
澄んだ闘志はゼルの心に火を点ける。
――戦いたいと思うヤツが二人も……!
縛られているだけの自身がこれ程にもどかしい。
歯痒さに体を動かすが、鎖が外れる気配も無い。その時ふと、エナの背に見慣れたものがあることに気付く。
「おい! それ! オレの剣だろ!?」
勝機が見え、希望が首を擡(モタ)げる。否、擡げたのは欲か。
「あたしの剣だってば!!」
鞭のように撓らせた三節棍を振り下ろしながらも彼女はきっぱりと言い切った。
死神が紙一重で躱し、空を切った其れは木の床を砕く。死神の反撃にエナは飛び退り、空中で一回転して着地する。
「テメ……! まだ言うンか!」
「何度でも、言ってやるっ!」
「喋る余裕があると思うな」
死神の頭上でぎゅんぎゅんと音を立てて回っていた大鎌がエナの左肩目掛けて薙ぎ払われる。
「っと!」
スピードでいえばエナが上。
素早く三節棍の鎖の部分で受けるつもりだったのだろうが、遠心力のかかった鎌は先ほどとは比べ物にならない力強さでもって彼女に襲い掛かった。
「っ!」
振り切られることを本能的に感じたのかエナは身を屈めることで、その一撃から逃れる。
けれども、その時。
切っ先がエナの首の後ろに僅かに触れた。
包帯が少し破れ、彼女の黄色い髪がほんの一束切り取られて、はらはらと地面に落ちた。
それが地に着くのを見届ける間もなく繰り出された鎌の柄による攻撃が、少女の腹部に深く入る。
「っぐ……!」
エナは吹き飛び、ゼルが居る支柱と鉄の鎖に思いっきり背中を打ちつけてそのままずるりと崩れ落ちた。
「おい、大丈夫かっ!?」
「……んなわけないでしょ!」
その怒鳴り声を聞いてゼルは安心した。
これだけ声を出せるのだから大丈夫ではないと言う割には大丈夫なのだろう。
三節棍と呼ぶには少々長い扱い辛い得物を難なく使いこなし繰り出された攻撃は意外にも隙がない。
回転をつけて打ち込んだエナの三節棍は大鎌の柄によって阻まれたが、その体から陽炎のように発せられる闘志にゼルは背筋を震わせた。
澄んだ闘志はゼルの心に火を点ける。
――戦いたいと思うヤツが二人も……!
縛られているだけの自身がこれ程にもどかしい。
歯痒さに体を動かすが、鎖が外れる気配も無い。その時ふと、エナの背に見慣れたものがあることに気付く。
「おい! それ! オレの剣だろ!?」
勝機が見え、希望が首を擡(モタ)げる。否、擡げたのは欲か。
「あたしの剣だってば!!」
鞭のように撓らせた三節棍を振り下ろしながらも彼女はきっぱりと言い切った。
死神が紙一重で躱し、空を切った其れは木の床を砕く。死神の反撃にエナは飛び退り、空中で一回転して着地する。
「テメ……! まだ言うンか!」
「何度でも、言ってやるっ!」
「喋る余裕があると思うな」
死神の頭上でぎゅんぎゅんと音を立てて回っていた大鎌がエナの左肩目掛けて薙ぎ払われる。
「っと!」
スピードでいえばエナが上。
素早く三節棍の鎖の部分で受けるつもりだったのだろうが、遠心力のかかった鎌は先ほどとは比べ物にならない力強さでもって彼女に襲い掛かった。
「っ!」
振り切られることを本能的に感じたのかエナは身を屈めることで、その一撃から逃れる。
けれども、その時。
切っ先がエナの首の後ろに僅かに触れた。
包帯が少し破れ、彼女の黄色い髪がほんの一束切り取られて、はらはらと地面に落ちた。
それが地に着くのを見届ける間もなく繰り出された鎌の柄による攻撃が、少女の腹部に深く入る。
「っぐ……!」
エナは吹き飛び、ゼルが居る支柱と鉄の鎖に思いっきり背中を打ちつけてそのままずるりと崩れ落ちた。
「おい、大丈夫かっ!?」
「……んなわけないでしょ!」
その怒鳴り声を聞いてゼルは安心した。
これだけ声を出せるのだから大丈夫ではないと言う割には大丈夫なのだろう。