闇夜の略奪者 The Best BondS-1
「ええ!? ジストさん、もう男の相手は嫌……」
「お願い。時間、あんまり無いの」
雰囲気を粉砕し続けるジストの言葉尻を奪い、エナは強い眼で告げる。
呼吸がし辛くなってきている。手も無意識下で小刻みに震える。
それに気付いているのかいないのか、ジストは嘆息を漏らした。
「……相手がこのレベルだと、時間稼ぎか絶命ってことになるけど?」
彼の基準が何処にあるのかはわからないが、どちらかということならばエナが選べるのは一つだけ。
「とりあえず、時間稼ぎで」
「了解。基本的には、ね」
ひらひらと手を振りながら彼は死神に向き直る。
「だけど、約束は出来ないな。エナちゃんの命には代えられないからね」
タダ働きはしないことにしてるんだ、とジストは実に爽やかな顔で言ってのけた。
デート一回の為に殺してしまう可能性を示唆する彼にエナは目を瞬(シバタ)いた。
「じゃ、死ねないな」
苦笑したエナは船内の何処かにあるだろう解毒剤を求めて踵を返した。
そこにゼルの声。
「おい! 先にコレ、なんとかしろ!」
「…………」
足を止め、エナはその言葉を背中で受け止める。
「アイツはオレが殺すンだ!!」
その刹那、エナは心が妙に冷えるのを感じた。落胆と表現するのが正しいのかもしれない。
そんな感情を抱えて瞳を閉じる。
再び瞼を持ち上げたとき、エナの身体は既に動いていた。
【それ】をすることに一切の躊躇いなど無かった。
「……な……っ!?」
狼狽が色濃く表れた声をあげたゼルを見下ろすのはエナの冷ややかな眼差し。
すらりと抜いた蒼い刀身をゼルの目の前に突きつける。
「死ぬ?」
冷静且冷徹な口調で彼女はたった一言、そう言い放った。
「ふざけンな……何の真似だ」
「それ、こっちの台詞」
死神とジストが膠着状態である為、静かなその声ははっきりと響いた。
「あんた、ふざけてんの? それとも死にたいの?」
「ンなワケねーだろがっ! なんだよ、テメェ、いい加減にしろよ!?」
切っ先の数センチ先には憎しみに溢れた瞳。それは死神だけでなく、解放を拒むエナにも向けられていた。
「お願い。時間、あんまり無いの」
雰囲気を粉砕し続けるジストの言葉尻を奪い、エナは強い眼で告げる。
呼吸がし辛くなってきている。手も無意識下で小刻みに震える。
それに気付いているのかいないのか、ジストは嘆息を漏らした。
「……相手がこのレベルだと、時間稼ぎか絶命ってことになるけど?」
彼の基準が何処にあるのかはわからないが、どちらかということならばエナが選べるのは一つだけ。
「とりあえず、時間稼ぎで」
「了解。基本的には、ね」
ひらひらと手を振りながら彼は死神に向き直る。
「だけど、約束は出来ないな。エナちゃんの命には代えられないからね」
タダ働きはしないことにしてるんだ、とジストは実に爽やかな顔で言ってのけた。
デート一回の為に殺してしまう可能性を示唆する彼にエナは目を瞬(シバタ)いた。
「じゃ、死ねないな」
苦笑したエナは船内の何処かにあるだろう解毒剤を求めて踵を返した。
そこにゼルの声。
「おい! 先にコレ、なんとかしろ!」
「…………」
足を止め、エナはその言葉を背中で受け止める。
「アイツはオレが殺すンだ!!」
その刹那、エナは心が妙に冷えるのを感じた。落胆と表現するのが正しいのかもしれない。
そんな感情を抱えて瞳を閉じる。
再び瞼を持ち上げたとき、エナの身体は既に動いていた。
【それ】をすることに一切の躊躇いなど無かった。
「……な……っ!?」
狼狽が色濃く表れた声をあげたゼルを見下ろすのはエナの冷ややかな眼差し。
すらりと抜いた蒼い刀身をゼルの目の前に突きつける。
「死ぬ?」
冷静且冷徹な口調で彼女はたった一言、そう言い放った。
「ふざけンな……何の真似だ」
「それ、こっちの台詞」
死神とジストが膠着状態である為、静かなその声ははっきりと響いた。
「あんた、ふざけてんの? それとも死にたいの?」
「ンなワケねーだろがっ! なんだよ、テメェ、いい加減にしろよ!?」
切っ先の数センチ先には憎しみに溢れた瞳。それは死神だけでなく、解放を拒むエナにも向けられていた。