桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「これは、返すよ」
青磁は重ねた掌を離し、
沙智の掌に、
紫陽花色のピアスを揃えてのせた。
「……なん、で?わざと忘れたのよ。次に青磁に会う口実を作るために」
「知ってる。その口実に俺も甘えていた。
これが俺のもとにあれば、また会える気がしたから」
「じゃあ、まだ持っててよ」
「もう、俺には必要ないんだ」
「あの子がいるから?あの子が、いるから……。あんな年下の子ども、青磁に似合わないわよ」
「確かに、あの子に俺は似合わないかもな」
「だったらーー」
「あんないいオンナ、俺にはもったいないよ」
はじめて、
青磁は真っすぐに沙智を視線の先にとらえ、
柔らかな、微笑を浮かべた。