金魚姫
プールにはキラキラと優しい光が反射しており、水面は穏やかに揺れている。


昨日と同じような風景だが、ビーチボールはどこにも浮かんでいない。


ヨータはがっかりしてプールから視線を上げた。


視界の隅のプールサイドで大きな体をちぢこめるように、ビーチボールは体育座りをしていた。
肩にはストライプ柄のタオルを掛けている。


  「あっ!!」


思わず、すっとんきょんな高い声を上げてムサシのリードを離してしまった。


すかさずプールサイドの隅に掛けていき、彼女の左隣にちょこんと行儀よく座った。


ヨータも続いて駆け寄る。

「来ていないかとおもった よ」


そういいながらビーチボールに冷たい缶を差し出した。


ビーチボールはコクリと頭だけ下げて受け取った。
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