恋心
大通りに着くと、交差点に人だかりが出来ていた。


「トラックとだってさ。」


「飛び出しだって。」


「うわ、相手トラックならしんでんじゃねー。」


「女の人だってよ。」


野次馬の隙間から見ると、トラックの下敷きになっていた人が、タンカにのせられる所だった。


救急隊員にかこまれていて、あまりよく見えない。


じっと見ていると、パジャマのズボンがチラッと見えた。


「と、徹ちゃん、パジャマ。」


それはさっき徹ちゃんが持ってきて、私が着替えさせたパジャマ。


「母さん、母さん、母さん。」


徹ちゃんは走り出した。


「ちょっと待って、君息子さん?」


徹ちゃんは警察官にとめられている。


「母さん、母さん、母さん。」


徹ちゃんの声が聞こえる。

私は力無くペタリと座り込んだ。





「お母さん、お母さん、お母さん。」


もう何も考えられない。


突然、座り込み泣き出した私を、警察官が支えて立たせようとする。


「大丈夫?
ほら、がんばって立って。」



「お母さん、お母さん、お母さん。」



何も考えられない。
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