恋心
「徹くん。」


お母さんが救急車からおりてくる。


なんで。


なんでおりてくるの?


なんで救急車は病院へ行かないの?


早く。


早く助けて。


「おばさん、助けてくれ。
母さんが、母さんが。」








そして、お母さんは頭をゆっくり横にふった。


「ごめんね、徹くん。」








「うそだ、うそだ。
おばさん、助けてくれよ。
おばさん医者だろ。
医者なら助けろよ。」


徹ちゃんがお母さんにすがりつく。


「頼むよ。
頼むから、助けてくれよ。
頼むから、母さんを。
おばさん。」




「おばさんも助けたかった。」




お母さんのその一言で、徹ちゃんが崩れ落ちる。


「母さん、母さん、母さん、あー。」


「徹くん、お母さんとこ行こうね。」


お母さんが徹ちゃんを支えながら歩く。


「恵理もおいで。」


私はフラフラとついて歩いた。







「顔は綺麗なままよ。」


お母さんの言う通り、泥で汚れてはいるけど、寝てるみたいに綺麗な顔だった。

体は、毛布がかかりわからなかったが、お母さんが、『顔は』と言ったのだから、体は……。
< 58 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop