恋心
「うそだろ。
うそなんだろ?」


声に振り向くと、立ちすくむ徹ちゃんのお父さんがいた。


「榊さん、こちらに。」


お母さんが呼んでも、立ちすんだまま動かない。


「なぁ、うそだろ。
こんなのうそなんだろ。」


そういいながらも、涙が頬を流れていく。


「榊さん。」


お母さんの声に、やっと少しずつ動き始める。


「ふざけるな。
てめぇくんな。
母さんに触るな。」


徹ちゃんが近づいて来たお父さんの胸倉をつかむ。


「てめぇのせいだ。
てめぇ、なにやってんだよ。」


徹ちゃんがお父さんを殴った。


何もせず、ただ徹ちゃんに殴られつづけるお父さん。

「徹くん落ち着いて。」


お母さんの声は徹ちゃんには届かない。



「君、なにしているんだ。」

徹ちゃんが警察官に取り押さえられる。


「離せー、離せー。
てめぇだけは許せね。
母さんに触るな。」


徹ちゃんの声が私の頭に響いていく。


だんだんとその声が小さくなり、私は意識を失った。
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