恋心
ガタガタと何かを押す音。

人の声。


消毒の匂い。


自分の体のだるさ、喉の痛みを感じる。


ゆっくりと目を開ける。


目に入ったのは、白い天上。


知らない白い天上。


体を動かそうとすると、体の節々が痛む。


そして腕の痛み。


腕には管。


腕からの管の先を見れば、点滴。


病院?


「恵理ちゃん、気がついた?
今先生呼ぼうね。」


安部さんがナースコールボタンを押していた。


「…あ…べ…さ。」


声が出ない。


「いいの、無理してしゃべらなくて。」


私はいったいどうしたんだろう?


お父さんを殴っていた徹ちゃんを思い出す。


徹ちゃんは?


「…と…お…。」


声が出ない。


「徹くんね。
徹くんなら家に居るわよ。恵理ちゃんはね、40度の熱が出ていて、丸三日寝ていたの。
雨にあたった事での風邪と、精神的ショックのせいで。
ご両親は今榊さんの手伝いしてるのよ。」


「……て…つ…だ」


「手伝い?」


私はコクリと頷く。


「葬儀の手伝いよ。」


……葬儀。


「あっ…や…。」


涙があふれる。
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