幸せという病気
「ねぇ・・・武?」
「・・・」
「武さ~ん??」
「・・・」
「・・・寝た?」
「・・・」
「・・・もう・・・私は後戻り出来ないんだからね・・・?優しすぎるんだよ・・・おやすみ・・・」
おそらく聞こえていない電話の向こうへ、ゆっくり小さな声で語りかけ、すみれは布団にくるまって眠りについた。
胸を締め付けるような淋しさと不安を、必死に布団の中で、出てこない様に包み込み、仕舞い込むように・・・。
次の日。
遥の病室には、竜司と担当医がいた。
そしてその病室には、久しぶりに笑顔が戻ってきていた。
「外に出てもいいの!?」
「うん、いいよ?そのかわり無理しちゃダメだよ?」
その日、担当医が遥の外出を許可してくれた。
「やったぁ!!」
遥が喜ぶと、竜司も嬉しそうに話し掛ける。
「どこ行きたい?遥」
「海!!」
「・・・冬じゃん・・・」
「いーの!海!」
「何すんの?海で」
「泳ぐ」
「ついに病気も脳に来たか・・・」
「何?」
「いや・・・」
「・・・今年の夏は行けるかわかんないし・・・ねっ!?」
「・・・海か・・・じゃあとりあえず、武さん達に連絡してくるから待ってて」
「うん!」
そう言い、竜司は電話を掛けに病室を出て行った。
担当医と二人きりになり、遥は礼を言う。
「・・・先生・・・ありがとう・・・」
「めいっぱい楽しんでおいで?」
「うん・・・先生?この間の話・・・みんなにはまだ・・・」
「ん?」
「体・・・次の発作にもう耐えられそうもないって・・・」
「・・・遥ちゃんが言わないでくれって言うなら・・・それに従うよ?」
「・・・お願いします」
その時、遥の目にはもう・・・覚悟が生まれていた・・・。