幸せという病気
そして半月後、旅行の日がやって来た。




それは・・・武、遥、香樹、祖母、竜司、すみれの六人で行ける最初で最後の旅行だった。

 

「竜司~。こないだも行ったね海」


「海好きだなぁ」


前の席で竜司と遥が話す。

すると、後ろの方で武が愚痴った。


「なんで俺、一番後ろなの・・・」


8人乗りのワンボックスカー。

竜司が運転をし、後部座席にはすみれと香樹、そして祖母が座り、武はそのまた後ろの席で一人で座っていた。


すみれが後ろを向きながら話す。


「だって武、その荷物が大きいんだもん」

「その荷物って・・・ギターね、ギター」

「へぇ~」

「軽っ!!」


そんな会話を、祖母は香樹にお菓子をあげながら笑って聞いていた。

そして祖母は申し訳なさそうに謝る。


「こんな年寄り連れて来なくてもよかったのに・・・すまないねぇ」


それを聞くと、今度は遥が後ろを振り返った。


「何言ってんのおばあちゃん!旅行に行く車でそんな事言わないの!」

「そうですよ!」


竜司も振り返ってそう言うと、


「お前は前見ろ!!」


一番後ろから武が怒る。


「・・・叱られた・・・」

「すぐ怒るからね、お兄ちゃん」


竜司と遥が笑って話していると、やがて武は寂しそうに前のめりで呟いた。



「あのね・・・後ろ過ぎておまえらの声が全く聞こえん・・・」




やがて三時間も走ると、車は人影の無い海に着いた。

そして、これから起こる事を知っているかのように、波はごうごうとうねりをあげていた・・・。
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