幸せという病気
「寒っ!」

「香樹、遠く行っちゃダメだからね」



車を降り、遥が香樹にそう言うと、武は遥に向かってイタズラ気な顔で話す。


「おまえもな?」

「わかってます」


ふてくされた顔で遥が答えると、無視するように武は祖母を気遣った。


「ばぁちゃん。寒いし車にいてもいいぞ?」


「そうだねぇ・・・これじゃ、私は無理そうだねぇ・・・」


そして祖母を車に残し、五人は冬の浜辺を歩いた。

ふいに香樹が呟く。


「お兄ちゃんっ。ポチポチも連れて来たかったね?」

「・・・そうだな」


それを聞くと、武は笑って香樹の頭を撫でる。

そして淋しそうな香樹を見て、突然三人に切り出した。


「ちょっと俺、香樹と遊んでくるわ!」


「え!?ちょっと!」


「すぐ戻ってくるから」



突然の事に遥が驚くと、それを横目に武は香樹を連れて、三人と反対方向に駆けて行った。



「すみれさん、行かなくていいの?」


遥がそう言うと、すみれは笑って答える。


「すぐ戻ってくるんでしょ?だったら、待つよ・・・」


その顔に、遥も竜司も言葉が見つからなかった・・・。



「私、おばあちゃん見てくるね?」



続けてすみれは二人に気を遣い、停めてある車に歩いて行く。


「・・・なんか、淋しそう・・・」


遥がそう呟くと、竜司は黙って遥の手を握り、そして開始早々みんながバラバラになってしまった事で、遥もまた淋しい顔をした。

そんな顔の遥を見て、竜司が間を埋めるように話し掛ける。


「この季節じゃさすがに花火はないね」

「うん・・・なんかみんなで来たのに・・・」

「まだ始まったばっかだよ?」


優しく竜司がそう言うと、遥は微笑みながら頷いた。

そして一方の武は、香樹とかけっこをしていた。


「おまえ早くなったなぁ足!」

「すごい?」

「すげーすげー!!」


嫌な出来事、思いを消し去るように、武は子供に返る。


「香樹、ちょっと待ってな!先生に電話するから!」


その場に座り、武はすみれに電話を掛ける。


「・・・もしもし?」


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