幸せという病気
急いで遥がお茶を運んでくると、すみれは笑顔で遥に話し掛ける。


「お姉さんですか?いつも香樹君から聞いてます」

「聞いてるって何をですか?」


武が疑問に思い、尋ねてみた。


「いえ。思った通りの素敵なお姉さんで、香樹君いつもお姉さんのお話するんです」

「えっ・・・なんて言ってるんですか?変な事とかじゃ・・・」


今度は遥が、不安な顔で伺う。


「お姉ちゃんが大好きで将来結婚するって言ってます」


終始笑顔で話をし、礼儀正しいすみれに、武は一瞬ドキっとした。

そして、すみれがふいに武に話し掛ける。


「香樹君、家ではどんな子ですか?」

「・・・えっ・・・あっ、別に普通ですけどね」

「ちょっとお兄ちゃん・・・普通って何・・・??」


動揺してうまく答えられずにいる武に、遥が隣からヒソヒソと注意をする。


「あっ・・・いやっ、元気ですよっ?学校ではどうなんですか?」


今度は逆に、照れながら学校での香樹の態度を尋ねると、すみれは少し困った顔で話しだす。


「学校でも元気が良いには良いんですけど・・・」

「・・・何かしました?」


少しビクビクしながら遥が伺うと、


「いえ・・・ちょっと元気が良すぎて手に負えないんです・・・」


苦笑しながら、すみれは恥ずかしそうに答えた。


「すいません・・・」


遥もまた、謝りながら少しホッとして、恥ずかしそうに下を向く。

そして、とっさにすみれは切り替える。


「あっ!香樹君、お兄ちゃんのおかげで僕は強くなったんだって言ってましたっ」

「あっ・・・そうすか・・・」


武がまた照れていると、すみれは鞄から一冊のアルバムを取り出した。


「これ、クラスのみんなに将来の夢を書いてもらったんです。香樹君の、読んであげてください」


そう言われ、武と遥はアルバムに目を通す。
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