幸せという病気
『一ねんごくみ いざきこうき 
 ぼくのしょうらいのゆめは、おねえちゃんをまもって、しあわせにしてあげたいです。あとは、おにいちゃんのようにつよいだんなさんになることです。あとパイロットです』





「ちょっと羨ましくなるくらい、お二人が大好きみたいです」


すみれがそう言うと、遥は自然と目頭が熱くなった。
そして武も作文を噛み締め、熱い思いが込み上げる。

続けて、すみれは香樹について語りだした。


「あの子はとっても優しい子で・・・何度か香樹君に助けられたんです。教師を始めてまだほんのちょっとで・・・ある時、子供達がよくわからなくなったんです・・・大人と違って平気で物を言ったりするし・・・子供達の親からは若いのに大丈夫かって目で見られて・・・まだ新米の私には重くなったりしました・・・でも香樹くんはいつも側にいてくれて、泣いてる時は手を握って、先生泣かないでって・・・」


遥は思い出していた。


いつも辛いとき、香樹が手を握ってくれてた事を・・・。


我慢していた涙が溢れ出す。


そしてすみれが続ける。





「人が辛そうにしてたら、そうしなさいって・・・お兄ちゃんに教えてもらったって・・・」






それを聞き、武もまた、香樹との会話を思い出す。








《香樹、友達は大事にしろよ?いっぱい遊んで、みんなで楽しい事探さなきゃな。喧嘩したりしてもいいぞ?聞いてるか?おまえ・・・でももしな?友達が辛そうにしてたら、どこにも行っちゃ駄目だからな?自分が辛くてもそいつの側にいてあげるんだぞ?何回も言ってるんだけども・・・もう覚えたか?これ」


《僕難しいの嫌・・・》


《・・・まぁ、勉強より簡単だよ。難しい話はやめて・・・じゃあ今度の日曜日お兄ちゃんと野球しよう野球》


《うんっ!》






すみれの言葉に武は実感した。




「・・・泣かせやがって・・・」




たとえ親がいなくても香樹はしっかり育っていると・・・。


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