幸せという病気

「香樹・・・?」


「ん・・・」





遥が、熱を出して寝ている香樹の名を優しく呼ぶと、香樹はぐったりしながら小さな声で反応した。




「大丈夫?香樹」


「・・・うん・・・」


「ごめんね?起こしちゃって・・・もうすぐ、すみれさんの赤ちゃんがね?産まれそうなんだよ?」


「・・・ホント?」


「うん、ホント。香樹、風邪で辛いけど・・・ほんの少しだけすみれさん頑張ってって、心の中で応援してくれる?」


「・・・うん・・・わかったぁ」


「ありがとぉ。早く良くなるんだよ?」


「うん・・・」






そして遥と祖母の二人は、香樹を連れて病院へと向かう。




やがて三十分もすると、病院に遥と竜司、祖母、香樹、茂・・・武が亡くなる時、そこに立ち会った人達が全員集まった。



凛とした空気の中、遥は両手を自分の息で温め、その柔らかい熱で、不安をなんとか和らげる。



そして香樹が寒さを訴えると、祖母は香樹の体調を気遣って看護師にお願いをし、香樹を一人、別室で寝かせてもらう事となった。










そのまま、ゆっくりと時間が流れる・・・。










分娩室でのすみれの陣痛による苦しみは続き、新しい命は何かにせき止められているかのように・・・未だこの世に姿を現さない。
その時、母体の娩出力以外にも、胎勢に異常が見られ始め、分娩が厳しさを増してきていた。








「・・・お願い・・・すみれさんも赤ちゃんも・・・頑張って・・・」










日にちが変わろうとする頃・・・遥が緊張からそう呟くと、竜司が口を開いた。









「・・・すみれさん・・・体力持つかな・・・」









「・・・体力・・・?」









遥が聞き返すと、不安な面持ちで竜司が続ける。







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